商品・マーケティング

すき家が値下げした10か月、松屋は値段で応じなかった

すき家が牛丼を450円に下げていた間、松屋の客数は前年を下回りました。松屋は値下げではなく、定期券やセットで応じ、すき家が値段を戻した3か月後に牛めしを値上げしました。公式の月次と価格改定のお知らせから追います。

2025年9月、すき家は牛丼並盛を480円から450円に下げました。物価高のなかでの値下げです。牛丼チェーンの値段は、ほかの2社の客足に響きます。松屋フーズホールディングスが毎月公表している月次(既存店の売上・客数・客単価)を、すき家と松屋の価格改定の日付に重ねると、次のようになりました。

すき家と松屋の並盛価格と、松屋の既存店(前年同月比の平均)
期間すき家 並盛松屋 並盛松屋 既存店客数松屋 既存店客単価
2024年9月〜2025年8月(12か月)430円→450円→480円430円→460円103.9%109.6%
2025年9月〜2026年6月(10か月)450円460円99.7%107.2%
2026年7月〜9月(3か月)480円460円101.5%99.1%

出所:松屋フーズHD「月次報告」(既存店は牛めし事業店=松屋のみ)、松屋フーズとすき家の価格改定のお知らせ。価格は税込・店内。すき家は2024年11月22日に430円から450円へ、2025年3月18日に450円から480円へ改定しています。

すき家が450円だった10か月、松屋の客数は前年を下回った

すき家は2025年9月4日、牛丼並盛を480円から450円へ、ミニを430円から390円へ下げました。すき家自身はこの改定を、物価高のなかで牛丼をより手頃に楽しんでもらうためと説明しています。この450円が続いた2025年9月から2026年6月までの10か月、松屋の既存店客数は平均で前年の99.7%でした。その前の12か月は103.9%で、客数は前年を上回って伸びていました。いちばん落ち込んだのは2026年6月で、95.5%です。

松屋は値段を下げず、「お得」で応じた

この間、松屋は牛めしを値下げしていません。並盛は2025年4月に上げた460円のままです。代わりに、来店のきっかけを作る施策を重ねました。すき家の値下げと同じ2025年9月には、定番の焼肉定食を100円引きにするクーポン企画を始めています。

  • 2026年1月:千葉県限定の「牛めしハッピーアワー」、牛焼肉関連の100円引きフェア
  • 2026年2〜4月:サイドメニュー1品が無料になるサービス券(2・3月は持ち帰り限定)
  • 2026年3月:1か月何度でもお得になる定期券「MATSUYA PASS」(7月にも販売)
  • 2026年3月:Uber Eatsで、店のテイクアウト価格と同じ値段にする取り組み
  • 2026年4月:メインとサイドを組み合わせる「選べる60種ランチセット」
  • 2026年3・6・9月:定番メニューに豚汁やスープを組み合わせるセット
  • 2026年6・8月:TVアニメ『ONE PIECE』とのコラボ

すき家が480円に戻した夏、客数は前年超えに戻った

すき家は2026年7月8日、牛丼並盛を450円から480円に戻しました。全サイズが30円の値上げです。松屋の既存店客数は、7月が101.5%、8月が102.4%、9月が100.5%と、3か月続けて前年を上回りました。

そして10月、松屋も480円に

すき家が値段を戻した約3か月後の2026年10月13日、松屋は牛めし並盛を460円から480円に上げました。牛めし類は全品、全サイズが一律20円の値上げです。これで、松屋とすき家の並盛はどちらも480円になりました。吉野家の牛丼並盛は、2024年7月29日に498円に上げてから据え置いています(2025年4月の改定でも並盛は据え置き)。

客単価の前年割れは「値下げ」ではない

2026年7〜9月は、客単価が平均で前年の99.1%と、前年を下回りました。ただし、松屋はこの間に値下げをしていません。前年の2025年4月に行った値上げの効果が、1年たって前年比から消えたことが大きいと考えられます。さらに、セットや定期券のようなお得な注文が増えれば、1人あたりの支払いは下がります。客単価の前年割れは、値上げの効果の一巡と、注文の中身の変化が重なったものと見るのが自然です。

時期と時間帯で値段を変える

松屋の価格の使い方で目立つのは、一律の値上げだけではない点です。2024年7月からは一部店舗で、22時から翌5時の注文に7%前後を加える深夜料金を取り入れ、2025年4月には対象店舗を広げました。2025年末から年始にかけては、東京都と神奈川県の一部店舗で、期間限定で7%前後を加算しています(並盛は460円が490円)。混む時期や時間帯に値段を上げ、ふだんの値段は据え置く形です。

その代わりに、利益は削れている

2026年4〜6月期(第1四半期)の連結決算では、売上高が前年同期比17.4%増えた一方、営業利益は28.0%減の6億95百万円でした。原価率は37.2%から37.4%へ、販売費及び一般管理費の比率は60.6%から61.2%へ上がり、会社が重視するFLコスト比率(売上原価と人件費の合計)は67.2%から68.2%に悪化しています。会社はこの理由を、エネルギー費や調達価格の上昇と、ベースアップや初任給の引き上げなどの人への投資と説明しています。通期の営業利益は8.0%増の予想ですが、第2四半期累計は11.7%減の予想です。

読むときの注意

  • 月次の既存店は、牛めし事業店(松屋)だけの数字です。松のやなどほかの業態は含みません。
  • 客数の変化は、すき家の価格だけでは説明できません。天候、新商品、出店、競合のほかの施策なども影響します。
  • 第1四半期決算短信は2026年8月18日に一部訂正されています(店舗改装の数を73店から39店に訂正)。この記事の数字には関係しません。

出所

  • 松屋フーズホールディングス「月次報告」(2024年4月〜2026年9月)
  • 松屋フーズ「価格改定のご案内」(2024年7月12日)、「価格改定および深夜料金導入店舗拡大のご案内」(2025年4月18日)、「年末年始における期間限定 価格改定のご案内」(2025年12月26日)、「価格改定のお知らせ」(2026年10月9日)
  • すき家「一部商品価格改定のお知らせ」(2024年11月18日、2025年3月12日、2026年7月3日)、「牛丼価格改定のお知らせ」(2025年8月28日)
  • 吉野家「価格改定のご案内」(2024年7月26日)、「一部商品価格改定のお知らせ」(2025年4月7日)
  • 松屋フーズホールディングスのプレスリリース(PR TIMES、2025年9月〜2026年9月)
  • 松屋フーズホールディングス 令和9年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月14日)と訂正(2026年8月18日)

本記事は公開資料をもとにした業界分析で、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値の誤りが見つかった場合は訂正方針に沿って訂正します。